令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況及び今後の対応に関する調査)調査報告書(詳細版)

報告書概要

この報告は、日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況及び今後の対応について書かれた報告書である。2020年10月に策定された「ビジネスと人権」に関する行動計画のフォローアップとして、東証一部・二部上場企業等2,786社を対象にアンケート調査を実施し、760社から回答を得た。また、詳細なヒアリング調査も併せて行い、日本企業の人権デュー・ディリジェンスの実態を把握した。アンケート結果では、人権方針を策定している企業は69%、人権デュー・ディリジェンスを実施している企業は52%となり、一定の取組は見られるものの、完全な浸透には至っていない状況が明らかになった。特に製造業が回答企業の57%を占め、業種による取組状況の差異も確認された。ヒアリング調査では、企業が抱える主要な課題として、社内での合意形成の困難さ、サプライチェーン全体への人権意識の浸透の難しさ、中小企業における人権意識の不足、組織体制の未整備、人的リソースの不足などが挙げられた。これらの課題に対して、報告書では三つの対応方向性を提示している。第一に人権課題・人権デュー・ディリジェンスに対する意識向上・理解醸成であり、特に売上規模や海外売上比率の小さい企業への重点的なアプローチが必要である。第二に社内リソース確保・体制構築であり、人権デュー・ディリジェンス未実施企業への取組波及や実施企業におけるリスク調査対象範囲の拡大に向けて、コストとリソースの負担軽減が課題となる。第三に効果的な人権デュー・ディリジェンス調査設計・対応ノウハウ獲得であり、具体的な実施方法やリスク評価手法に関するガイドライン整備が求められている。