令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況及び今後の対応に関する調査)調査報告書(概要版)
報告書概要
この報告は、日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況について調査・分析した経済産業省委託事業の報告書である。2011年に国連人権理事会で支持された「ビジネスと人権に関する指導原則」と2020年10月に策定された日本政府の行動計画を背景として、人権デュー・ディリジェンスを含む日本企業の人権対応の実態把握を目的としている。調査では2021年9月から10月にかけて東証一部・二部上場企業等2,786社を対象にアンケートを実施し、760社から回答を得た。また、アンケート結果を基に5社への詳細ヒアリング調査も行われた。調査結果によると、回答企業の約7割が人権方針を策定し、5割強が人権デュー・ディリジェンスを実施しているものの、外部ステークホルダーの関与は3割にとどまっている。業種別では製造業が57%と最も多く、次いで商業、金融・保険業が続いている。ヒアリング調査では、取組が進んでいる企業と進んでいない企業に分けて実施され、人権デュー・ディリジェンス実施における課題が明らかになった。主な課題として、現場レベルでの人権意識の浸透の困難さ、中小企業における人権意識の不足、調査対象企業の多様性とそれに対応する人的リソースの不足、評価基準の未整備、社内体制の不明確さなどが挙げられている。報告書では、企業が抱える課題を人権課題・人権デュー・ディリジェンスに対する意識向上・理解醸成、社内リソース確保・体制構築、効果的な人権デュー・ディリジェンス調査設計・ノウハウ獲得の三つに分類し、それぞれに対応する取組方向性を提示している。政府・公的機関による取組例として業種別ガイドライン整備やナレッジ共有、人権を尊重した経営の重要性に関する周知・啓発などが、企業・業界団体による取組例として業界団体・企業間での勉強会実施や他社事例を踏まえた効率的な社内体制の検討などが挙げられている。