令和3年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(次世代の消費・流通の在り方に関する調査)調査報告書(公表用)
報告書概要
この報告は、新型コロナウイルス感染拡大の影響下における百貨店業界の課題と将来の在り方について検討した調査報告書である。
百貨店業界は新しい生活様式への転換、情報テクノロジーの進化、人口減少と高齢化に伴う人材確保難、地域経済での役割変化など様々な課題に直面している。本調査では、持続可能な次世代小売・流通業の在り方を検討するため、業務効率化、働き方改革、地域社会との連携について15の事例調査を実施し、10名の有識者による研究会を4回開催した。
事例調査では、EDI(電子データ交換)の普及・標準化が重要な課題として浮上した。百貨店業界では異なるフォーマットのEDIサービスが利用されており、日本百貨店協会が旗振り役となって統一されたEDIフォーマットの構築を目指すことが理想とされている。また、取引先のデジタル化推進には、コスト負担を考慮したインセンティブの明示と導入支援が必要である。単品管理の導入や共同配送の推進についても、標準化された仕組みでの実現が重要であり、配送コスト削減だけでなく荷受け業務削減などの効果も含めた検討が求められている。
働き方改革については、百貨店とテナント・販売員派遣企業との連携が重要であり、人材確保の観点から定休日設定の検討も提案されている。地方百貨店の役割では、ブランド力と集客力を活用した地域産品のプロデュースと販路開拓、交通手段を含めた回遊性向上、eコマースによる販路拡大が重要な戦略として位置づけられている。
研究会では、百貨店が社会的存在として地域貢献に資する取り組みを重視すべきとの意見が示された。また、競合他社との協調領域と競争領域の明確化、スピード感のある改革推進、小さな成功事例の積み重ねによる変革推進が必要とされている。地方百貨店については、文化的・商業的側面での地域貢献を継続しつつ、高齢化と少子化への早期対応が求められている。
