令和3年度重要技術管理体制強化事業(対内直接投資規制対策事業(諸外国における投資環境動向調査))報告書
報告書概要
この報告は、諸外国における対内直接投資規制の制度及び運用実態について調査した報告書である。国際的な投資環境の変化に対応するため、米国、カナダ、EU、ドイツ、フランス、イタリア、英国、オーストラリアの8か国・地域における資本移動規制制度を詳細に分析している。近年、企業買収の増加や政府系ファンドの台頭、技術の軍事転用への懸念、さらに新型コロナウイルスによる経済混乱により、各国は安全保障を理由とした投資管理規制を強化している。米国では2018年に外国投資リスク審査現代化法が成立し、CFIUSの審査権限が拡大された。支配権取得を伴わない投資や不動産取引も審査対象となり、重要技術、重要インフラ、機微個人情報に関わる事業への外国投資に対する規制が強化されている。カナダでは投資法に基づき、一定額以上の投資案件について国益審査が実施され、文化産業や戦略的業種には特別な規制が適用されている。EUでは2020年に対内直接投資規制規則が施行され、加盟国間の協力体制が構築されている。ドイツでは対外経済法により、軍事関連技術や重要インフラに対する投資審査が行われている。フランスでは通貨金融法典に基づき、戦略的業種への投資に事前承認制度が導入されている。イタリアでは黄金権限制度により、戦略的資産の保護が図られている。英国では2021年に国家安全保障投資法が制定され、17の業種について義務的届出制度が導入された。オーストラリアでは外国買収買取法により、国益に反する投資を阻止する制度が運用されている。これらの調査結果は、我が国の投資規制制度の検討及び適正な審査運用に活用される予定である。
