令和3年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(産業保安に関連する課題に対する新たな解決アプローチ推進調査(金融を活用した産業保安の取組促進策検討等))調査報告書

掲載日: 2022年6月2日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業保安グループ保安課
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令和3年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(産業保安に関連する課題に対する新たな解決アプローチ推進調査(金融を活用した産業保安の取組促進策検討等))調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、金融を活用した産業保安の取組促進策について書かれた報告書である。産業保安分野では、現場の人材不足や設備の高経年化が進み、事業者による自主的な保安力高度化が求められている現状がある。特に中小企業においては、安全の取組ノウハウが少なく、金融機関やサプライチェーンによる支援を含めた働きかけが期待されているものの、そのような取組は少ない状況である。

本事業では、金融機関の支援策の検討と試行を通して、産業保安分野でのサステナブルファイナンスの実施ノウハウの蓄積を目的としている。みずほ銀行の「SDGs推進サポート私募債・ローン」を活用し、高圧ガス・危険物の安全、化学物質の安全・公害防止、労働安全、電力の安全といった安全分野を幅広くスコープとした取組を実施した。

報告書では、保安に取り組むインセンティブの理解促進方策として、経済的効果、規制対応効果、ESGブランディング効果、従業員満足度向上効果といった観点から検討を行っている。また、安全目標の簡易な設定支援策として、外部認証や安全KPIの活用について検討している。安全の取組実施支援策では、経営層のコミットメント、安全への資源投入、危険源の特定、緊急事態への準備、教育体制といった項目を含む包括的なチェックリストを提示している。

企業価値との相関分析では、安全成績と投資パフォーマンスの関係について、従来の想定とは異なる結果が得られた。休業度数率とROA(総資産利益率)については統計的に有意な負の関係が見られ、安全成績がよい企業ほど生産効率性が高い可能性が示唆された。今後の課題として、産業保安分野の幅広いステークホルダーへの普及と安全KPIの標準化が挙げられている。