令和3年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等事業(産業保安のスマート化に関する海外動向調査等事業)報告書
報告書概要
この報告は、令和3年度に実施された産業保安のスマート化に関する海外動向調査について書かれた報告書である。経済産業省が推進するスマート保安政策の国際展開を目的として、三菱総合研究所が調査を実施したものであり、主に「産業保安の国際展開に向けた研究会」の活動成果と日中スマート保安セミナーの事前調査から構成されている。
近年のプラント事故増加の背景には、設備の高経年化や作業員の高齢化といった課題があり、新型コロナウイルス感染症の拡大や自然災害の多発により、事業継続性の確保が重要な課題となっている。この状況を受けて経済産業省では、企業の自主的な保安力向上を促進するスマート保安政策を推進し、タイ工業省との協力覚書締結や中国との産業保安セミナー開催を通じて国際協力を進めてきた。
研究会では、東北大学の高木敏行特任教授を座長とし、三菱ケミカル、千代田化工建設、横河電機など産業界の専門家10名が参加し、4回にわたり検討を重ねた。調査内容は、プラント産業の需要予測と基盤技術予測、スマート保安技術の競争力分析、アジア地域への海外展開戦略の策定という3つの柱で構成されている。
プラント産業における将来予測では、2030年から2050年にかけてのエネルギー市場環境の変化を分析し、脱炭素化の進展により石油精製や石油化学産業の構造変化が予想されると指摘している。また、デジタル技術の活用により、プラントの運転・保守の高度化が進展し、事業構造も大きく変化することが予測されている。
産業保安技術の競争力分析では、日本のスマート保安技術の国際競争における位置づけを調査し、海外企業との比較分析を実施した。その結果、日本企業が有する技術的優位性と課題を明確化し、国際展開における戦略的な方向性を検討している。
アジア地域への海外展開戦略については、政府間協力の重要性を強調し、技術移転やビジネス展開のための具体的な方策を提案している。特に中国市場については、安全生産行動計画の推進や産業ガス分野での安全管理ニーズの高まりを背景とした協力の可能性を分析している。中国政府の産業保安管理体制として、国務院安全生産委員会を中心とした組織構造と各部署の役割分担が詳細に調査されている。