令和3年度産業経済研究委託事業スタートアップによるレイター期・IPO ファイナンス等の見直しに係る調査報告書
報告書概要
この報告書は、日本のスタートアップによるレイター期・IPOファイナンスの現状と課題について分析した調査報告書である。野村総合研究所が経済産業省に向けて作成し、スタートアップの成長促進に向けた金融システムの改善策を検討している。
報告書では、日本のリスクマネー供給がコロナ禍でも増加傾向にあるものの、海外と比較して「大きく成長するスタートアップ」が少ないという課題を指摘している。特に、IPO規模の小ささやIPO後の成長停滞が問題となっており、これらの要因を分析するため、Pre-IPO、IPO、Post-IPOの各段階におけるファイナンスの現状調査を実施した。
Pre-IPO段階では、日本のVCによるレイター期への資金拠出割合が海外と比べて小さく、特に大規模な資金調達が困難であることが明らかになった。また、ディープテック系スタートアップへの資金供給拡大に向けて、非上場株式のセカンダリー取引の重要性が検討されている。
IPO段階における課題として、公開価格設定プロセスの透明性不足、親引け制度の運用の曖昧さ、革新的ビジネスモデルを有するスタートアップの適切な企業価値評価の困難さが挙げられている。特に小規模IPOでは初期収益率が高く、適切な価格設定ができていない現状が指摘されている。
Post-IPO段階では、上場後の資本政策やIR戦略の最適化、新株予約権型ファイナンス等の新たな資金調達手段の活用、M&A実施のための公募増資の課題が分析されている。現状では、M&Aを目的とした国内公募増資が困難であり、成長企業が海外資金に依存する構図が形成されている。
調査結果を踏まえ、スタートアップCEO・CFO向けのガイダンス作成と研究会の実施を通じて、大規模IPOの実現とIPO後の継続的成長を目指すための方策が検討されている。報告書は、日本のスタートアップエコシステムの競争力向上に向けた具体的な制度改善の方向性を示している。
