令和3年度産業経済研究委託事業スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス

掲載日: 2022年6月10日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局産業創造課・新規事業創造推進室
タグ: 資金調達
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和3年度産業経済研究委託事業スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンスのサムネイル

報告書概要

この報告は、スタートアップの成長に向けたファイナンスについて書かれた報告書である。経済産業省が2022年4月に公表したもので、我が国のスタートアップがより良い成長環境を構築するための指針を示している。

報告書では、スタートアップがイノベーションの担い手として日本経済の未来を牽引する企業となることが期待されているが、海外諸国のGAFAMやBATHといった巨大企業群と比較して成長スピードに課題があることを指摘している。スタートアップの大きな成長を実現するうえで、事業戦略のみならずファイナンス戦略が重要な役割を果たすものの、その多様性と複雑性により全体像の把握が困難な状況にある。

ファイナンスの基礎概念として、デットファイナンス(融資)とエクイティファイナンス(出資)の違いを明確にし、適切なファイナンス戦略の重要性を説明している。特に一旦資本構成が固まると後の変更が困難であるため、予め全体像を把握して各フェーズで想定される課題を踏まえた最適な戦略検討が必要であるとしている。

スタートアップが直面する10の主要なファイナンス課題として、適正価値での調達、初期株主層の形成、経営層・従業員のインセンティブ設計、企業価値向上を実現する体制整備、未上場時の幅広い資金調達手段活用、成長に資する投資家確保、効果的なIPOプロセス実行、流動性確保、IPO後の成長資金調達、IPO後の非連続成長手段確保を提示している。これらの課題は業界属性により重点を置くべきポイントが異なり、特に研究開発型スタートアップは投資家への事業内容説明の困難さと長期資金供給者確保の必要性が強調されている。また、ベンチャーファイナンスの世界がアートの世界に近く、投資家との交渉結果により実現されるものであり、そこには戦術的要素が重要であることも述べられている。