令和3年度燃料安定供給対策に関する調査事業(カーボンニュートラル社会に向けた石油コンビナートへの変革・連携強化に関する分析調査)報告書
報告書概要
この報告は、カーボンニュートラル社会に向けた石油コンビナートの変革・連携強化について書かれた報告書である。
本調査は、2050年カーボンニュートラル宣言とグリーン成長戦略の策定を背景として、日本の石油コンビナートが脱炭素時代の国際競争に対応していくための連携事業創出・促進政策の立案を目的として実施された。化石燃料需要の減少と新興国からの競争力ある製品輸出により、アジア市場はかつてない競争に晒されている状況を踏まえて、石油精製、石油化学、化学、鉄鋼、その他製造業が集積する日本のコンビナートの変革方向性を検討した。
調査は4つの主要領域から構成される。第一に海外石油コンビナートの設備戦略調査では、アジア圏、米国、欧州の主要コンビナートを対象として、中国の恒力石化や浙江石化の大規模エチレン装置、ベトナムのニソン製油所、サウジアラビアのSadaraコンビナート、米国のシェールガス活用戦略、欧州の水素・アンモニア・CCS技術などを詳細に分析した。第二に国内石油コンビナートの国際競争力評価では、AHP(階層化意思決定法)を用いて国内外25の主要コンビナートを6つの大項目(原料調達力、製造力、製品の価値・品質、環境低負荷、立地条件、規制・支援条件)で評価し、2021年と2025年の競争力ポジションを分析した。
評価結果では、米国ベイタウンがトップとなり、シェール由来の原料調達力と製造力で優位性を示した。アジア地域ではインドのリライアンス、台湾麦寮、日本Bが高評価となったが、日本の国内平均ではアジアトップとの差が拡大する傾向にあることが判明した。第三に石油・石化製品の需給バランス分析では、全国石油精製LPモデルと石化バランスモデルを構築し、2025年度の燃料油要生産量相応ケースとガソリン急減ケースで試算を実施した。結果として2025年度にTOP能力に対して344千BDから488千BDの余力が発生し、2~3か所の原油処理機能停止に相当する設備過剰が予測された。
第四にカーボンニュートラルに向けた分析調査では、ボトムレス化や石化シフトに関する先進技術、CLOのニードルコークス活用技術、オリゴマリゼーション技術、廃プラスチック再資源化技術などを調査した。また各コンビナート地区の立地条件と蓄積技術を踏まえた低炭素化ミックススキームを策定し、従来型競争力の維持と新たな国際競争力強化の両立を目指す方向性を示した。欧州調査では産業間連携プロジェクトやCCS開発が進展していることを確認し、日本においてもクリーンアンモニアや椰子殻バイオマスペレットなど独自の低炭素ソリューション開発の重要性を指摘した。本調査結果は、日本の石油コンビナートがカーボンリサイクル技術やグリーン化技術を取り入れて脱炭素時代にふさわしいコンビナートへ持続的に変革するための具体的な政策立案基盤として活用される。
