令和3年度産業保安等技術基準策定研究開発等(休廃止鉱山におけるグリーン・レメディエーション(元山回帰)の調査研究等事業)報告書
報告書概要
この報告は、休廃止鉱山におけるグリーン・レメディエーション(元山回帰)に関する調査研究について書かれた報告書である。令和3年度に独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構により実施された本研究は、金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づく第5次基本方針を踏まえ、今後150年以上にわたり坑廃水処理が必要となる鉱山の存在を受けて、長期的視点に立った能動的な鉱害防止対策技術の検討を目的としている。
研究の主要な構成要素として、マンガン酸化菌利用処理技術等調査研究が挙げられる。Mn酸化菌を活用した坑廃水処理技術について、国内外の事例調査と実用可能性評価を実施し、人工湿地方式では20~60mg/L、接触酸化方式では10~60mg/Lの濃度範囲での適用が可能であることが明らかとなった。また、共存元素として鉄や亜鉛の影響評価が行われ、特に亜鉛の存在がMn酸化菌の活性に影響を与える可能性が指摘された。
さらに、生態影響評価ガイダンスと利水点等管理ガイダンスの改訂作業が実施された。これらのガイダンスは令和2年度に案として作成されたものであり、都道府県等の実際の利用者からの意見を反映してオンライン説明会を通じて改訂が行われた。植物と微生物の複合共生系を利用した新たな緑化対策技術についても調査が実施され、事業者のニーズを反映したガイダンスが作成された。
第6次基本方針策定の方向性検討では、利水点等管理とパッシブトリートメントに関するスクリーニング手法の開発が行われた。休廃止鉱山の類型化を通じて、各鉱山の特性に応じた最適な処理技術の選定プロセスが構築され、統合的な整理により効率的な対策選定が可能となった。これらの成果を踏まえ、第6次基本方針の方向性案がとりまとめられている。
研究実施体制として、グリーン・レメディエーション等研究委員会をはじめ、マンガン酸化菌利用処理技術等調査研究ワーキンググループ、基本方針検討ワーキンググループが設置され、専門家による多角的な検討が行われた。本研究により、持続可能な鉱害防止対策技術の実用化に向けた基盤が構築されたといえるである。