令和3年度無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業地域MaaS社会実装のための収益モデル調査事業報告書
報告書概要
この報告は、地方地域における持続可能なMaaS(Mobility as a Service)の社会実装に向けた収益モデルについて調査分析した報告書である。経済産業省が国土交通省と連携し推進しているMaaS政策において、特に地方部では収益確保やデータ利活用のモデル確立が困難で、多くの取組が社会実装に至っていない課題を受けて実施された調査である。
調査では、交通事業者による公共交通の運営状況と連携分野の違いにより、香川県高松市のバタクス創出、宮崎県のMaaSアプリによる商業連携、長野県塩尻市のデマンド運行、静岡県浜松市の移動診療車、茨城県境町の自動運転バスという5つの先進事例を選定し、インタビュー調査を実施した。分析の結果、地方部では交通課題のみならず、高齢化や地域経済衰退といった社会課題を包括的に解決する手段としてMaaSが期待されていることが明らかとなった。
収支モデルについては、地域交通の充実度により「ビジネス協働型」と「行政サービス型」に分類され、それぞれ異なる取組内容と収益目標を持つことが判明した。しかし現段階では、取組の進行状況やコロナ禍の影響により、どちらのモデルも目標達成には至っておらず、中長期的な視点での計画が必要である。データ利活用においては、データ量の制約、管理体制の構築、他分野との連携が主要な課題として挙げられ、移動データと他分野データを組み合わせたユースケースの創出が重要とされた。
持続性確保の観点から、自治体の確固たるビジョン提示、事業者のMaaS参画における意義やメリットの共有、地域住民の受容性向上が重要な要素として特定された。最終的に、持続可能なMaaSの実現には、社会課題解決を目的とした自治体のビジョン提示と、事業者や地域住民との協議による取組意義の共有、適切なコスト負担に関する納得感の醸成が不可欠であると結論づけられている。
