令和3年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(ベトナム国・社会利活用のための小型衛星コンステレーション化導入に係る調査)事業報告書
報告書概要
この報告は、ベトナム国における社会利活用のための小型衛星コンステレーション化導入に係る調査について書かれた報告書である。
ベトナムは2021年2月に新しい宇宙戦略「2030年に向けた宇宙科学技術の開発及び導入に係る戦略」を公布し、地球観測センサ技術習得、高解像度超小型衛星の組立・試験、地上局製造、通信衛星トランスポンダ技術習得、航行測位能力構築などの野心的な目標を掲げている。この戦略実現のため、ベトナム国家宇宙センターから日本に調査支援要請があり、本調査が実施された。
調査では、日本宇宙フォーラムを中心とするスタディチームが、ベトナムの政策・戦略、社会課題、宇宙技術ニーズを広く調査し、超小型衛星コンステレーション導入のマスタープランを策定することを目的とした。世界的な衛星の小型化・コンステレーション化の進展により、従来より低コストで高頻度観測が可能となり、新たな社会利用が期待されている。
調査では、ベトナムの宇宙関連組織の現状、世界の衛星システム動向、社会課題と衛星利用ニーズを分析した。その結果、3U/6U級超小型通信衛星システム、100kg級小型地球観測衛星システム、測位信号認証実験などの具体的な衛星システムを提案している。また、既存のJICA円借款による地上インフラや宇宙アセットを最大限活用し、日本のTellusとベトナムのVDCデータプラットフォーム連携も検討されている。
人材育成計画では、6U級超小型衛星から100kg級小型衛星の開発・運用、地球観測データ利用に向けたキャパシティビルディングを提案している。ベトナム産業界の宇宙ハードウェア自国生産能力評価では、ワイヤハーネスやソフトウェア分野で短期的参画可能性があることが判明した。衛星システム製造ロードマップも策定され、段階的な技術習得と参加企業拡大の道筋が示されている。
裨益効果分析では、農業、森林保全、防災、漁業、都市インフラ分野での直接的効果と、国家レベルでの間接的効果が評価されている。ファイナンススキームでは、円借款、無償資金協力、技術協力、民間投資などの活用可能性が検討されている。最終的に、実現性と効果を考慮した3つのロードマップオプションが提案され、ベトナムの現状に最も適したミックスアプローチの選択を期待するとしている。