令和3年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(海外の洋上風力発電設備に関する運用実態調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、海外の洋上風力発電設備に関する運用実態調査について書かれた報告書である。経済産業省による令和3年度新エネルギー等の保安規制高度化事業として、株式会社構造計画研究所が受託し、株式会社北拓およびテュフズードジャパン株式会社が再委託先として実施された調査である。本事業の目的は、海外の洋上風力発電設備を対象に運用保守に関する実態や動向を調査し、洋上風力発電設備導入促進に係る一層の安全確保および保安の高度化の観点から、我が国の洋上風力発電設備に適した保安のあり方を検討することである。
調査は大きく二つの柱で構成されている。まず海外の洋上風力発電設備の運用実態調査として、デンマーク、イギリス、ドイツ、中国(台湾を含む)、アメリカを対象に、安全規制・規格・認証、運用保守、資格制度等、契約・ファイナンス・保険について文献調査およびヒアリング調査を実施した。次に日本の洋上風力発電設備に係る保安規制のあり方の検討として、海外調査結果を基に日本の現状の保安規制と比較し、保安規制のあり方について取りまとめを行った。
調査過程では、東京大学の石原教授を委員長とする有識者委員会を設置し、全3回の委員会を開催して調査・検討内容の議論を行った。海外調査により得られた知見と日本の洋上風力発電事業者へのヒアリング調査から、日本において現行の電気事業法に関する保安規制を遵守する中で実務上運用の課題となる点を把握した。
分析の結果、陸上風力発電設備の保安規制を洋上風力発電事業にそのまま適用すると問題となる課題があることが確認され、これらの課題は三つの論点に整理された。論点1は「アクセスが困難な環境条件を踏まえた保安力の維持・向上に向けた対応」、論点2は「洋上での作業が困難な環境条件を踏まえた保安力の維持と作業安全性の向上に向けた対応」、論点3は「発電事業者が取得できるデータが限られていることへの対応」である。
これらの課題に対する対応として、IoT、ロボット技術、ドローン技術、スマートメンテナンス技術などの活用やヘリコプターを活用した風力発電所へのアクセスなど、新しい技術や既存の活用可能な技術で代替できる項目の検討が重要であるとされた。欧州等の海外では遠隔監視技術等が既に活用されており、これらの海外事例を参考に日本の実情に合った制度や技術の導入検討が必要であると結論づけられている。