令和3年度産業経済研究委託事業(非財務情報開示の海外動向等に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、非財務情報開示の海外動向と電子開示システムの整備に関する調査について書かれた報告書である。
環境・社会・ガバナンス要素をはじめとする非財務情報に対する企業や投資家などの関心が高まる中、日本では有価証券報告書におけるESG開示議論の加速や、プライム市場上場企業への気候変動関連開示義務化など、規制当局による非財務情報ルール整備が進展している。国際的にはIFRS財団による国際サステナビリティ基準委員会設立や、国際統合報告評議会とサステナビリティ会計基準審議会の統合によるValue Reporting Foundation創設など、開示基準設定団体の体制再構築が活発化している。
本調査では、非財務情報開示基準と電子開示システムの論点整理のため、主要国の非財務情報開示動向、電子開示システム、XBRLデータ利用状況について調査を実施した。電子開示システムに関しては、日本のEDINETとTDnet、米国のEDGARが稼働しており、XBRLによる財務情報提出が可能となっている。欧州では2020年に上場企業の財務情報XBRL提出が義務化され、企業のサステナビリティ報告指令提案を受けて、財務・非財務情報を同一プラットフォームで閲覧可能なESAP創設議論が進んでいる。英国では上場企業のXBRLデータ提出が義務化された。
XBRLデータ利用に関するヒアリング結果では、XBRLフォーマットを肯定する意見が多く、定性情報が投資判断に活用されていることが確認された。日本のEDINETは定性情報をXBRL対象に含める点でグローバル比較において進んでいる。しかし非財務情報への適用では、定性情報の長文や図版での説明など財務情報とは異なる課題が指摘された。
主要国の非財務情報開示制度動向として、米国SECによる気候変動と人的資本開示基準、英国FRCの非財務報告基準改訂、欧州委員会による企業サステナビリティ報告指令提案などが進行中である。これらの調査結果を踏まえ、非財務情報の電子開示システム開発・整備における留意事項の考察を行った。
