令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(グローバル課題の解決に向けた日本の中堅・中小企業と海外企業等との共創に関する調査)最終報告書
報告書概要
この報告は、日本の中堅・中小企業と海外企業との価値共創による社会課題解決に関する調査について書かれた報告書である。
調査背景として、アジア地域を中心とする新興国の経済発展に伴い、日本の中堅・中小企業の海外展開がコスト削減を主目的とした製造拠点展開から、新興市場の需要獲得や現地企業との価値共創を目指す展開へと変化していることが指摘されている。しかし現状では、日本の中堅・中小企業が現地企業との価値共創を追求している事例は限定的であり、この活動の拡大が日本のプレゼンス向上と企業の持続的成長に必要とされている。
調査目的は、グローバル社会課題解決を通じた日本のプレゼンス向上と、中堅・中小企業の持続的に稼ぐ力を醸成するための政策的支援の検討である。そのため「日本の技術」「現地のニーズ」「現地の社会課題」を整理し、価値共創の仕組み実現に向けたパイロット事業を実施し、課題抽出と政策的支援の在り方を検討している。
グローバル課題として、食料と農業分野では「食料生産性の欠如」と「フードロス」、健康と福祉分野では「予防・衛生環境の欠如」と「医療へのアクセス不足」が特定されている。対象地域は東南アジア、南アジア、東アフリカとされ、それぞれの地域で異なる課題意識が確認されている。日本企業の保有技術として、フードロス解決に向けてはコールドチェーン技術や食品加工技術、食料生産性向上には育種・育苗技術や有機肥料技術、医療アクセス改善には検査・診断技術が挙げられている。
価値共創事業の実現に向けては、技術要素の抽出、社会課題情報の抽出、現地シーズ・ニーズ情報抽出を適切にマッチングする場の提供と、共創に向けた伴走支援が重要である。日本企業の海外展開における課題として、推進人材不足、信頼できる現地パートナー発掘の困難、規制・認証対応体制不足、情報収集体制不足などが抽出されている。効果的な施策として、価値共創エコシステム形成に必要な仕組み、場、繋がり、知識・経験の構築を段階的に進める取組が提案されている。
