令和3年度大企業等人材による新規事業創造促進事業(なでしこ銘柄選定・普及事業)報告書
報告書概要
この報告書は、令和3年度における「なでしこ銘柄」選定事業について書かれた報告書である。
経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「なでしこ銘柄」事業は、女性活躍推進に優れた上場企業を投資家にとって魅力ある銘柄として紹介し、企業の取組み加速化を図ることを目的としている。平成24年度から開始され、令和3年度で10年目を迎えた同事業では、東証全上場企業を対象とした女性活躍度調査を実施し、業種ごとに優れた企業を選定・発表している。
事業実施にあたっては、有識者8名からなる選定基準等検討委員会を設置し、選定基準や調査内容について検討を行った。女性活躍度調査では、企業の女性活躍推進に向けた取組みとその開示状況を調査し、スコアリング結果に基づいて上位企業を「なでしこ銘柄」として選定した。また、選定企業に対するフィードバックレポートの作成や説明会の開催を通じて、女性活躍を含むダイバーシティ経営の普及啓発を図った。
過去10年間の事業効果分析では、なでしこ銘柄選定企業が東証一部平均と比較して高い収益性を示していることが確認された。特に3回以上選定された企業群のEBITDAマージンは13.4%と、調査回答企業の下位100社の8.1%を大きく上回っており、女性活躍推進への取組みが企業の財務パフォーマンス向上と関連していることが示唆されている。
今後の方針検討では、過年度回答企業6社へのヒアリング調査と海外の情報開示フレームワーク分析を実施した。企業からは調査が女性活躍推進の目標設定や定期的な取組み点検のきっかけとなっている一方で、回答負担の軽減や経営戦略との関連性をより重視した評価への要望が寄せられた。海外フレームワーク分析では、現在の女性活躍度調査がインプット指標の割合が高いことが判明し、各職階でのジェンダー比率やペイギャップ等のアウトプット指標の重要性が示された。
これらの調査結果を踏まえ、企業の経営戦略と女性活躍推進を結び付けた取組みの実施や情報開示がより一層求められることが明らかとなり、日本企業のさらなる女性活躍推進に向けて、より多くの企業にインパクトを与える事業のあり方について検討が行われた。
