令和3年度化学物質安全対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業(パッシブサンプラーを用いた蓄積特性の異なる化学物質の生物濃縮試験代替え法の検討)」調査報告書
報告書概要
この報告は、化学物質の生物濃縮試験代替法としてのパッシブサンプラー(SPMD)を用いた蓄積特性の異なる化学物質の評価について書かれた報告書である。化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律における蓄積性試験では、従来の魚類を用いた濃縮度試験が行われているが、この方法は大規模な実験施設と時間を要し、個体差や実験条件による試験値のばらつき、動物愛護の観点から問題がある。本研究では、Semi permeable membrane device(SPMD)を用いた生物を用いない代替試験法の有用性を検討した。
研究では多環芳香族炭化水素類(PAHs)として、アントラセン、ピレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレンの4種を対象とし、コイ(Cyprinus carpio)とSPMDを用いて流水条件下での取込・排泄試験を実施した。試験期間は2021年9月から11月にかけて、取込期間28日間、排泄期間28日間で行われた。OECDTG305に準拠した試験により、各媒体での取込・排泄速度定数、生物濃縮係数(BCF)を算出し比較検討を行った。
コイとSPMDの脂質補正BCFの関係を比較した結果、logPow 4-5の間で比較的良好な相関性が確認された。しかし、高logPow(5以上)の物質であるベンゾ[a]アントラセンやベンゾ[a]ピレンでは、SPMDとコイのBCF値に乖離が認められた。この原因として、生体内での代謝の影響や、被験物質の一部がSPMDのポリエチレン膜へ吸着・脱着した影響が考えられる。これらの結果から、logPowが3.5から5の範囲にある化学物質については、代謝などの影響や分析手法を更に検証することで、魚の生物濃縮試験に代替してSPMDでBCFを予測できる可能性が示された。