令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(持続可能な社会への移行に向けた蓄電池産業のあり方の検討に係る調査)報告書
報告書概要
この報告は、持続可能な社会への移行に向けた蓄電池産業のあり方について書かれた報告書である。
日本の蓄電池産業は、技術優位性により初期市場を確保したものの、市場拡大に伴い中韓メーカーがシェアを拡大し、日本メーカーのシェアは低下している状況である。電池主要4部材では中国メーカーが市場を寡占している一方で、電極用バインダーや導電助剤、バッテリーパウチ材においては日本メーカーが一定のシェアを獲得している。特にクレハは世界シェア33%、日本A&Lは26%、デンカは31%を占め、DNPはバッテリーパウチで55%の世界シェアを持つなど、周辺材料分野では競争力を維持している。
日本の蓄電池産業のSWOT分析では、強みとして研究開発能力、国内サプライチェーンの存在、安全性、経験豊富な技術者が挙げられる。機会としては急速な市場成長見込み、雇用創出、自動車産業の電動化の世界的潮流、政府支援に対応する能力のある製造事業者の存在がある。一方で弱みは産業政策と国家戦略の欠如、国内市場の小ささ、労働コスト、天然資源の不足、高い電気料金である。脅威として資源供給混乱への脆弱性、海外競合による略奪的価格設定、技術流出、人材流出、グリーン社会基盤の他国依存リスクが指摘されている。
製造技術動向では、電池の安全性担保、品質向上、コスト低減、CO2削減が主要な改善目標となっており、自動化、デジタル化、知能化技術の導入が進んでいる。日本が考慮すべき重要ポイントとして、競合他社との比較を踏まえた電池の安全性・品質・価格レベルの設定、カーボンフットプリントの差別化要素としての活用タイミング、電池メーカーと設備メーカーの関係性の見直し、先端技術における競合他社との技術力の差の把握などが挙げられている。
