令和3年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(生物多様性総合対策事業)委託事業報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省から委託された生物多様性総合対策事業について書かれた報告書である。本事業は、一般財団法人バイオインダストリー協会が令和3年度に実施した生物多様性条約(CBD)に関する総合的な対応を取りまとめたものである。
報告書は、国際会議支援、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)環境整備、カルタヘナ法執行支援の三つの主要分野を扱っている。新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)をはじめとする多くの国際会議が延期または形式変更を余儀なくされた。このため、公式な交渉の進展は限定的であったが、オンライン形式での会合が実施された。
特に重要な課題として、デジタル配列情報(DSI)の利益配分問題が挙げられている。この問題に対応するため、DSI交渉方針検討会を設置し、有識者による政策オプションの評価を実施した。また、ポスト2020生物多様性枠組の策定についても継続的な検討が行われている。
国内体制整備では、ABS専用ウェブサイトの運営、セミナー開催、相談窓口対応により、企業や研究機関の海外遺伝資源アクセスを支援した。令和3年度の相談件数は37件であった。カルタヘナ法に関しては、オンライン説明会を開催し、法律の理解促進と適切な執行支援を行った。
本事業の成果は、今後のCBD交渉における日本の対応方針策定や、国内利用者の円滑な遺伝資源アクセス環境整備に寄与することが期待されている。産業界専門家と学識経験者から構成される委員会の指導のもと、複雑化する国際情勢に対応した総合的な取り組みが展開された。
