令和3年度中小企業実態調査事業(中小企業に対する直接金融に係る調査)報告書
報告書概要
この報告は、中小企業に対する直接金融に係る調査について書かれた報告書である。新型コロナウイルス感染症の影響により政府系・民間金融機関による実質無利子無担保融資が実施され、250万社超、48兆円超の融資が実行されてきた状況において、ポストコロナ時代を見据えた攻めの投資に必要な資金調達手段として、従来の借入ではなくエクイティ・ファイナンスの活用可能性を検討した実態調査である。
日本の非上場中小事業者は資金調達において金融機関からの借入に依存しており、増資による資金調達は極めて稀な状況にある。しかしエクイティ・ファイナンスには返済義務がないため新事業開始時のリスクテイクがしやすく、出資者からの積極的な経営支援を得られるといったメリットがあり、種類株式等の設計と適切なタイミングにより融資より出資を活用すべきケースが考えられる。
調査では国内の中小事業者に対するインターネットアンケート調査を実施し、4万人のモニターから35,289件の回答を得てスクリーニングを行い、条件に合致した3,803名に本調査を実施して1,892件のアンケートを回収した。対象企業は年商1億円から500億円の創業10年以上の株式会社で、直近5年間の売上変動が±30%以内の安定した事業者に限定した。
調査結果から、中小事業者のエクイティ・ファイナンス活用実態を明らかにし、利活用を促す余地のある事業者とそのタイミングについてペルソナを特定した。また実態調査を通じて課題を「つまずき」として整理し、解決に向けた効果的な取組みについて提言をまとめた。さらに経験の浅い中小事業者と今後出資を検討する投資家が参考とする情報整備を実施し、株式評価手法、投資回収方法、種類株式、出資時の留意点等について体系的に整理し、投資契約書のひな型も作成した。
