令和3年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(自然災害に係る電力設備保安に関する調査事業)報告書
報告書概要
この報告は、自然災害に係る電力設備保安に関する調査について書かれた報告書である。経済産業省の委託により、電気設備自然災害等対策ワーキンググループの再開に向けて、近年の自然災害が電力設備に与える影響とその対策について包括的な調査が実施された。
過去10年間における我が国の自然災害による電力設備被害を詳細に分析し、台風、大雨、大雪、地震、噴火による具体的な被害状況と停電規模を整理している。特に2014年の記録的大雪では全国で延べ約1815千戸の停電が発生し、2016年の台風10号では北海道・東北地方で延べ約25万戸が停電するなど、広域的な被害が頻繁に発生していることが明らかになった。
2021年2月の福島県沖地震による火力発電設備への影響について専門的な調査を行い、地震動に対する発電設備の健全性確保の重要性を検証している。さらに、米国テキサス州で発生した寒波による電力設備停止の事例分析により、極端気象に対する電力システムの脆弱性と対策の必要性を明らかにしている。
2021年度に発生した特殊な自然現象として、福徳岡ノ場の噴火による軽石被害、トンガ海底火山噴火による潮位変化、電磁パルスの電気設備への影響について調査を実施した。これらの新たな脅威に対する電力設備の保安対策の検討が急務であることを示している。
海外事例として、米国カリフォルニア州の山火事による電力設備被害と、電力会社PG&E社の包括的な山火事対策について詳細に分析している。植生管理、電気インフラの安全性検査、電力システムの強化、公的電源遮断などの多面的なアプローチが山火事リスクの軽減に有効であることが確認された。
報告書は、地球温暖化等により自然災害が激甚化・頻発化する中で、電力システムの強靭性確保と迅速な復旧体制の構築が不可欠であることを結論付けている。