令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(諸外国の中小企業の再生・融資慣行に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、コロナ禍における中小企業の過剰債務問題と事業再生支援について、諸外国の取組みを調査した報告書である。中小企業庁が2022年3月に公表した本調査は、新型コロナウイルス感染症の長期化により中小企業の債務残高が2019年末から2020年末にかけて52兆円増加し、債務の過剰感を感じる中小企業が3割超に達したことを背景として実施された。調査対象国は米国、英国、フランス、ドイツ、韓国の5カ国であり、文献調査と現地金融機関へのインタビューを通じて、各国のコロナ禍での事業者支援施策と融資慣行について分析を行った。調査結果によると、各国ともコロナ禍において融資・保証、支援金、税務措置といった政府支援を実施したが、過剰債務問題の顕在化は確認されず、具体的な対応策も見当たらなかった。一方、英国では上院議員や金融業界団体による問題提起と解決提案が確認され、IMFは具体的な政策決定プロセスを提案している。融資慣行については、経営者保証が各国で一般的に行われているものの、その目的や考え方は国により様々であることが判明した。中小企業支援を主業務とする政府系金融機関の存在状況も国により異なり、存在する国でも民間金融機関との協業形式が多く確認された。IMFの分析では、2020年末時点の世界の企業債務がGDPの98%に相当する83兆ドルに達し、今後の金利上昇と財政支援縮小により企業の脆弱性が顕在化する可能性があるとして、各国政府に破綻処理制度の強化を求めている。
