令和3年度原子力の利用状況等に関する調査(諸外国における原子力発電所の利用に関する事項の調査)報告書
報告書概要
この報告は、諸外国における原子力発電所の利用に関する事項の調査について書かれた報告書である。米国における原子力発電所の設備利用率改善過程及び長期運転の達成過程を調査し、日本への適用性を検討することを目的として実施された。調査では、1979年のTMI事故後にNRCが策定したTMIアクションプランと、それに基づく安全対策要求から始まる一連の規制改善過程を分析している。特に1980年代における米国原子力発電所の保守状況は、機器故障による計画外停止が全体の半数を超えており、予防保全プログラムの導入が不十分であった状況から、NRCが1990年代に策定した保守規則の効果について詳細に検討した。この保守規則に基づく点検内容の合理化、構築物・系統・機器の重要度分類に基づく保守管理の合理化等が、原子力発電所のパフォーマンス改善に大きく寄与したことが明らかになった。また、検査制度がSALPからROPへ移行したことにより、原子力発電所の安全性がより定量的に示され、継続的な向上が図られた。さらに、24か月運転サイクルの実現、リスク情報を活用したパフォーマンス・ベースの規制、運転認可更新規則による長期運転への移行などが段階的に実施された。これらの改善は、事業者側のパイロットプラント受入、NUMARC(現NEI)による産業界ガイドの整備、EPRIによる研究開発、INPOによるパフォーマンス改善支援等の産業界の自主的取り組みと、NRCとの緊密な連携によって実現された。調査結果を踏まえてNEIへのヒアリングを実施し、抽出された良好事例の日本への適用性を検討した結果、規制機関と産業界の協力的関係構築、リスク情報を活用した合理的規制の導入、産業界の自主的改善努力の重要性が確認された。
