令和3年度産業経済研究委託事業(ローカルベンチマークを含む中小企業の非財務情報活用及び事業性評価の実態把握に係る調査研究)報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省が実施したローカルベンチマークを含む中小企業の非財務情報活用及び事業性評価の実態把握に係る調査研究について書かれた報告書である。
調査の背景として、人口減少や新型コロナウイルス感染症の流行により、地域経済の持続可能性確保のため事業再構築や新事業創出の重要性が高まっている状況がある。従来の財務情報だけでなく、非財務情報を含む事業性評価が金融機関において重要視されており、保証や担保に過度に依存しない資金調達環境の整備が求められている。
調査は4つの主要項目から構成され、事業性評価の手法及び非財務情報の活用実態調査、ローカルベンチマーク活用の実態調査、地域支援ネットワークのモデル事例構築、ABLや電子記録債権等のアンケート調査が実施された。商工会議所・商工会2,323機関、認定経営革新等支援機関約3万先、金融機関603社を対象とした大規模調査である。
事業性評価は金融庁が平成26年に重点施策として掲げた概念で、企業の財務面だけでなく事業の持続可能性や将来性を評価する手法である。ビジネスモデル俯瞰図、SWOT分析、3C分析、4P分析等の経営分析手法が活用されており、各支援機関は独自の視点で非財務情報を収集・分析している。
ローカルベンチマークは平成28年3月に経済産業省が公表した事業性評価の入口となるツールで、財務分析シートと非財務情報シートから構成される。商工会議所・商工会での活用率は約37%、金融機関では約64%となっており、補助金申請支援や経営相談での活用が多い。活用効果として企業の現状把握や課題の見える化、支援機関との対話促進が挙げられる一方、認知度不足や作成に要する時間の負担が課題となっている。
地域支援ネットワーク構築のモデル事例として静岡県御前崎市での実践講座実施や、複数の金融機関でのローカルベンチマーク活用事例が紹介されている。これらの事例では、企業と支援機関の共通言語として機能し、円滑な情報共有と協力体制の構築に寄与している実態が確認された。
