令和3年度産業保安等技術基準策定研究開発等(電力設備電磁界情報調査提供事業)報告書
報告書概要
この報告は、令和3年度に実施された電力設備電磁界情報調査提供事業について書かれた報告書である。電気安全環境研究所が経済産業省の委託を受けて、商用周波電磁界に関する国内外の研究動向や規制動向の調査、電力設備から発生する磁界の測定、電磁界の健康影響に関する講演会の開催、情報提供資料の作成・改訂などを実施した総合的な事業報告である。
研究動向調査では、世界最大の電磁界データベースであるEMF-PORTALから2021年に公表された107件の文献を収集し、生体影響に関する54件について詳細な分析を行った。疫学研究8件、実験研究39件、技術研究3件などの内容を整理し、超低周波磁界と小児がんの関連性に関するメタ分析などの重要な知見が報告されたが、従来の結論を変更するような新たな科学的証拠は確認されなかった。
電力設備の磁界測定は全国5箇所で実施され、秋田市、横浜市、金沢市、松山市、熊本市において電気設備及び日常生活環境の磁界レベルを測定し、各地の講演会で測定結果を情報提供した。講演会は同じ5都市で開催され、行政の取り組み紹介、電磁界の基礎知識、身のまわりの電磁界について専門家による講演が行われ、合計324名が参加した。また、松山市講演会の様子を動画撮影してインターネット上で公開し、より多くの方々が情報にアクセスできるよう配慮した。
情報提供資料として、パンフレット「電磁界と健康」の改訂第19版を発行し、有識者の監修により分かりやすい表現への修正やIARCによる発がんハザード分類に関する最新情報の更新を行った。経済産業省のホームページも見直し、国民が必要とする時に最新かつ正確な電磁界情報を入手できる環境を整備した。さらに、過去10年間の事業実績を振り返り、37道府県で計43回の講演会を開催し累計4101人が参加したことを確認し、参加者の92.7%が講演会を有益と評価していることから、国民の電磁界に関する理解促進に寄与していると結論付けている。