令和3年度産業経済研究委託事業(グリーン社会の実現と競争政策に関する論点整理に向けた調査)報告書

掲載日: 2022年8月26日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局競争環境整備室
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報告書概要

この報告は、グリーン社会の実現と競争政策に関する論点整理について書かれた報告書である。

2015年のパリ協定採択により、世界的に産業革命前と比べて気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力が共通目標となった。我が国では2020年10月に2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現が宣言され、グリーン成長戦略が策定されている。こうした中、特に欧州を中心に、サステナビリティや環境保護、気候変動対策に配慮した取組みを競争政策上どのように考慮すべきかについて活発な議論が行われている。

本調査では、グリーン社会の実現に向けた競争政策に関する論点として、気候変動対策等の国内外動向とサステナビリティ確保に向けた競争政策の検討状況を調査した。まず、温室効果ガス排出削減政策については、日本、EU、米国が2050年に排出ネットゼロを掲げ、2030年目標はそれぞれ異なる削減割合と基準年を設定している。また、2021年はCOP26開催により、世界的に気候変動関連ファイナンス・情報開示制度の導入が大きく進展した年となった。日本ではTCFD開示が実質制度化され、EUではタクソノミーやサステナブルファイナンス開示規則が適用開始された。

競争政策の検討状況については、EUが水平的協力ガイドライン改正案を公表し、サステナビリティ合意の検討プロセスを示している。オランダは適用除外を認める立法推進とサンドボックス制度導入を検討し、ギリシャも同様の制度設計を進めている。オーストリアでは2021年7月に競争法を改正し、環境的に持続可能な経済や気候中立な経済への貢献をカルテル規制の適用除外の考慮要素として法律上明記した。これは他に例のない画期的な取組みである。ドイツ競争当局はバナナ業界の賃金改善、動物福祉への配慮、生乳価格引上げに関する具体的事案で見解を表明している。英国CMAは政策ガイダンスを公表し、サステナビリティの便益を柔軟に考慮する積極的姿勢を示した。OECDは継続的にカンファレンスを開催し、環境影響の範囲、考慮すべき消費者、タイムフレーム、他の影響とのバランスといった課題を整理している。