令和3年度予防・健康づくりに関する大規模実証及び認知症関連事業調査報告書
報告書概要
この報告は、令和3年度の予防・健康づくりに関する大規模実証および認知症関連事業について書かれた報告書である。
経済産業省と厚生労働省が連携し、エビデンスに基づく予防・健康づくりの推進を目的として実施された本事業では、「予防・健康づくりの大規模実証に関する有識者会議」が設置された。この会議は疫学、医療経済学、データ管理・解析等の専門家により構成され、海外のUSPSTFやNICEなどの推奨を参考としたポジティブリストの作成に向けた検討を行った。有識者会議では、エビデンスの強さだけでなく公平性や経済性を考慮した総合的判断の必要性、対象者の年齢やライフステージを加味した分類の重要性、環境整備等のポピュレーションアプローチの必要性等が議論された。
また海外エビデンスの国内適用可能性を検討するワーキンググループが設置され、生活習慣や文化の違い、現行制度との関係性を考慮した「エビデンスリスト+」の試行的作成が行われた。健康経営に関するソリューション提供企業や先進的取組企業への調査では、ポジティブリストが新しい介入の採用促進や事業者選定の参考として活用可能である一方、対象者特性に応じた詳細な分類や具体的事例の提示が必要であることが明らかとなった。
認知症関連事業においては、当事者参加型開発モデル、QOL・well-being指標の開発、データ利活用による持続可能な社会基盤づくりの三つの論点について検討が進められた。当事者参画型開発では、認知症当事者と企業が協働で製品・サービス開発を行うプロトタイピングが実施され、共創の際の留意点が整理された。QOL・well-being指標については、海外で開発が進む評価指標の国内活用に向けた調査準備が行われ、認知症予防サービスの効果検証に関する検討会が組成された。データ利活用においては民間企業のニーズ調査を通じて、持続可能なデータ管理体制の仮説検討が実施された。今後はプロトタイピングの実践を通じた当事者参画型開発の普及施策検討、日本人集団を対象とする効率的調査の実施、持続可能なデータ管理体制の具体化が課題として挙げられている。
