令和3年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(RFIDに関するオペレーション・データの標準化)成果報告書
報告書概要
この報告は、流通・物流業界における深刻な人手不足や新型コロナウイルスの影響による課題を解決するため、RFID技術を活用したサプライチェーンの効率化と付加価値創出に関する調査について書かれた報告書である。
経済産業省商務・サービスグループ消費・流通政策課の委託により、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が令和3年度に実施した流通・物流効率化基盤構築事業の成果をまとめたものである。本調査は、個別の作業効率化だけでなく、製配販プレイヤー間での情報共有によるサプライチェーン全体最適を目指すものとなっている。
調査内容は大きく3つの項目で構成されている。第一に、個品へのRFID組込方法のルール化では、良品計画との協業により日用消費財の典型的商品を対象とし、ラベル付き商品とダイレクトプリント商品について製造工程での実証実験を実施した。第二に、物流資材に組み込まれたRFIDを活用する際のオペレーション・データ項目のルール化では、日本チェーンドラッグストア協会との連携の下、カゴ台車・パレットでの検品効率化とRFIDによる防犯環境高度化について実証を行った。第三に、メーカー・卸・小売の主要プレイヤーや有識者で構成される検討会を組成し、実用化に向けた課題と解決策を検討した。
個品へのRFID組込では、3種の生活雑貨商品について製造工程でのフィールド実証により、既存ラベルへの電子タグ組込が製造工程にほとんど影響を与えずに実現可能であることが検証された。また、3種の食品商品では研究室実証によりダイレクトプリント商品へのラベル貼付の可能性と課題が確認された。物流資材のRFID利活用では、3つのメーカー・卸での実際の物流シーンにおいて、物流資材のRFIDとASNの活用により卸での検品作業効率化への寄与が検証された。さらに、小売店舗での1週間にわたる一貫したモニタリングにより、ソースタギング相当の商品店舗内トラッキングが十分可能であることが実証された。
実証実験結果から、単なる個別作業効率化ではなく、複数プレイヤー間での相互連関による業務効率化やサプライチェーン全体での合理化を目指すBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の観点での検討が重要であることが明らかとなった。このBPRによる業務再構築の標準化により、課題解決実績の相互運用性向上、ICT利活用による高度スキル不要化、情報システム開発のベンダーロックイン解放によるコストダウンという効果が期待される。今後のRFID利活用検討においては、単なる業務効率化ではなく、BPRの手段としてのRFID活用という観点での取組が肝要であると結論付けられている。
