令和3年度重要技術管理体制強化事業(車載用LIB等に含まれる鉱物資源リサイクルの現状と流通実態を踏まえた課題抽出等に関する調査)最終報告書
報告書概要
この報告は、電動車等の普及に伴う車載用リチウムイオンバッテリー(LIB)等に含まれる鉱物資源リサイクルの現状と流通実態を踏まえた課題抽出について書かれた報告書である。
世界の電動車市場は急速に拡大しており、2030年に4,540万台、2040年に10,216万台に達すると予測されている。これに伴い車載用LIBの需要も急激に増加し、2030年には905GWh、2040年には4,903GWhに達すると見込まれている。日本における乗用車のフローでは、年間約486万台が新車として販売され、約443万台が廃車されている状況である。
現在のLIBリサイクルの課題として、回収システムの整備不足、経済性の確保、技術的な処理能力の向上などが挙げられている。海外においては、欧州バッテリー規則案をはじめとする規制強化の動きが見られ、米国、中国、韓国、インドネシアでも積極的なリサイクル政策が展開されている。これらの政策では、回収率の向上、リサイクル材料の使用義務化、サプライチェーンの透明性確保などが重視されている。
LIBに含まれる主要鉱物資源であるリチウム、コバルト、ニッケル、マンガンについて、将来の需要量推定と供給状況の分析が行われた。特にコバルトとリチウムについては、供給不安定性と価格変動リスクが高く、リサイクルによる回収量拡大が重要であることが明らかになった。鉱種別サプライチェーンの分析では、特定国への依存度が高い現状が課題として浮き彫りになっている。
ライフサイクルコストとCO2排出量の観点から、リサイクルの損益分岐点分析が実施された。現状では経済性の確保が困難な状況であるが、技術革新とスケールメリットにより将来的には採算性が向上する可能性が示されている。また、三元系バッテリー生産におけるCO2排出量削減効果も確認されており、環境面でのメリットが大きいことが判明した。
今後の課題として、効率的な回収システムの構築、リサイクル技術の高度化、経済性の向上、国際的な規制対応、サプライチェーン全体の最適化が挙げられている。これらの課題解決により、資源循環型社会の構築と持続可能な電動車普及の実現が期待される。