令和3年度産業技術調査事業「イノベーション創出を目指した事業会社からの事業切出し手法及び大学発ベンチャーの実態等に関する調査」
報告書概要
この報告は、日本企業におけるイノベーション創出を目的とした事業切出し手法および大学発ベンチャーの実態について書かれた報告書である。
日本では研究開発支出の93%が大企業に集中しているが、自社内で事業化されない技術やアイデアの63%がそのまま消滅している現状がある。企業内で眠っている経営資源を有効活用する手法として、カーブアウトやジョイントベンチャー等による事業切出しが注目されているものの、日本全体では十分に実施されていない状況である。
事業切出しの手法は、スピンアウト、スピンオフ、カーブアウト、ジョイントベンチャーに分類され、母体会社との資本関係や経営者の関与度によって区別される。2010年代後半には事業切出し事例が増加傾向にあり、IT系に比べて「ものづくり」や「医療ヘルスケア」等の研究開発型が多く設立されている。素材分野ではジョイントベンチャーの割合が高い特徴がある。
一方、大学発ベンチャーについては、設立状況の調査および実態調査が実施されている。これらの調査を通じて、大学発ベンチャーが直面する課題の分析が行われており、技術の事業化における障壁や支援体制の在り方について検討されている。
カーブアウト推進における主要課題として、切出し元企業側での理解不足、親元企業と新規出資者との連携体制構築の困難、退出戦略の不明確さ、知的財産の流動化の困難、専門的支援の不足等が挙げられている。2004年に設立された日本初のカーブアウト専用ファンドは当初伸び悩んだが、2020年以降は事業切出しに特化した投資ファンドが成長している。
