令和3年度新エネルギー等の保安規制高度化事業委託費(水素熱量測定検討調査)報告書
報告書概要
この報告は、晴海選手村地区における水素導管供給事業における熱量測定および付臭剤に関する安全性について書かれた報告書である。2050年カーボンニュートラル実現に向けて、水素エネルギーの活用が期待される中、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、晴海選手村地区跡地において水素を導管により街区に設置した燃料電池へ供給する事業が検討された。この事業は東京ガス、晴海エコエネルギー、ENEOS、パナソニック、東芝および東芝エネルギーシステムズで構成される事業者により実施される予定である。
本調査では、水素ステーションでの品質管理方法として、カナリア成分分析による水素ガス成分分析結果を熱量および燃焼性測定の代替手段として用いることの安全性と合理性、ならびに付臭剤による水素ガス品質への影響について評価が行われた。水素熱量測定検討委員会が設置され、東京理科大学の倉渕隆教授を委員長として、帝京大学、燃料電池実用化推進協議会、水素供給利用技術協会の専門家により構成された。
評価の結果、水素ステーションにおける品質管理は「水素品質管理の運用ガイドライン」に基づき実施されており、カナリア成分として一酸化炭素の連続分析により水素品質を管理する手法が確立されている。この方法により品質管理が適切に実施されている範囲において、直近のルーチン分析結果を一般ガス成分分析に読み替えることが可能であると評価された。付臭剤については、都市ガス供給では有機硫黄化合物が使用されるのに対し、晴海水素供給ではシクロヘキセンが400ppm程度で使用される計画である。
付臭剤成分は燃料電池セルへの影響が懸念されるため、燃料電池手前に設置される脱臭器により除去される計画であり、提案者の社内試験において所定の条件で脱臭措置が可能であることが確認された。また、400ppmのシクロヘキセンを水素に添加した場合の熱量および燃焼性への影響は小さく、一般の燃焼性を議論する上でも問題ないものと評価された。委員会における審議の結果、水素ステーションでの品質管理方法による成分分析結果を熱量および燃焼性測定の代替手段として用いることの安全性と合理性について技術的に妥当であり、熱量および燃焼性測定において付臭剤成分を含まないことに問題はないとの結論に至った。
