令和3年度燃料安定供給対策に関する調査等事業 (潤滑油の安定供給に向けた原料確保の多様化に関する調査・分析事業) 調査報告書(公表用)
報告書概要
この報告は、潤滑油の安定供給に向けた原料確保の多様化に関する調査・分析について書かれた報告書である。資源エネルギー庁委託事業として、一般社団法人潤滑油協会が令和3年度に実施した事業の結果をまとめたものであり、基油原料の多様化および二酸化炭素削減を目的として、使用済み潤滑油からの基油再生に関する包括的な調査・分析を行った内容となっている。
報告書では、まず基油再生に関する動向調査として、国内事業者に対する最新の取組状況調査を実施し、2050年カーボンニュートラルへの関心の高さや再生基油に対する意識の変化を明らかにした。品質に問題がなく経済的であれば再生基油を使用してもよいという意見が多く得られた一方、品質・供給の安定性や市場での受け入れ体制、微量混入物質による性能劣化への懸念などの課題も明らかになった。また、欧州等事業者に対する調査では、欧州における基油再生の先進的な取組状況を詳しく分析し、170万キロリットルの使用済み潤滑油が回収され、そのうち105万キロリットルが再生基油として製造されている実態を明らかにした。
次に、再生基油を用いた潤滑油の試作および品質評価を実施し、国外で製造された再生基油13油種とバージン基油2油種を入手して性状分析を行った。再生基油を用いた加工油と機械油の試作を行い、性能評価を通じて実用性を検証した結果、適切な品質管理下では原油から製造された基油と同等の性能を持つ潤滑油の製造が可能であることが確認された。
さらに、使用済み潤滑油の基油再生に関する社会システムの検討を行い、ライフサイクルアセスメントの観点から環境負荷削減効果を評価した。我が国における基油再生の可能性を検討し、今後の潤滑油需要の変化を踏まえた基油供給の将来像を想定した。基油再生に取り組む上で実現すべき社会システムとして、使用済み潤滑油の適切な分別、効率的な回収ネットワークの構築、地域ごとの基油再生プラントの設置、潤滑油製造業における再生基油の活用体制、需要家における再生潤滑油の利用促進などが必要であることを明らかにした。結論として、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、政府主導による基油再生システムの早急な構築と、官公庁でのグリーン調達制度の導入が重要であると提言している。
