令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等成果報告書(カーボンニュートラルコンビナート実現に向けた検討事業)
報告書概要
この報告は、カーボンニュートラルコンビナート実現に向けた検討事業について書かれた報告書である。
2050年カーボンニュートラル宣言を受けて実施された本事業では、国内コンビナートのカーボンニュートラル化実現に向けた包括的な調査・分析が行われた。産業部門からのCO2排出量削減が喫緊の課題となる中、石油精製事業者、石油化学事業者、金属事業者などが密接に連携するコンビナートでの協調的な脱炭素化取組に着目した。
調査内容は三つの柱で構成される。第一に、コンビナート立地事業者のカーボンニュートラル化ポテンシャルと効果について、各業種の既存設備活用可能性と代替手段による効果を分析した。電力業界では再生可能エネルギー導入とともに水素・アンモニア発電、火力発電+CCUSの活用が検討されており、既存設備を活用した混焼から専焼への転換により大幅なCO2削減効果が期待される。第二に、脱炭素燃料等の供給拠点としてのコンビナートの役割について、地域社会への効果とカーボンニュートラルポートの有効活用方法を検討した。第三に、ロッテルダム、アントワープ、ケムパーク、テキサス州等の海外先行事例を調査し、我が国のCNK形成への示唆を抽出した。
カーボンニュートラルコンビナート研究会では、有識者と関係業界団体による議論を通じて実現戦略を策定した。CNKの意義として、脱炭素エネルギー・炭素循環マテリアルの効率的供給、脱炭素化技術のテストベッド機能、産業間連携による集積効果の最大化が確認された。実現に向けた連携ポテンシャルとして、水素・アンモニア等の共同調達・利活用、CCSの共同実施、省エネルギー・省資源取組の強化が重要である。
提言では、国には全体最適を図る戦略的推進、設備投資・技術実証支援、社会全体でのコスト負担仕組み構築が求められる。自治体には地域内連携促進、住民理解促進、地域経済活性化への貢献が期待される。企業には資本の壁を越えた連携強化、産学連携推進、人材育成への取組が必要である。金融にはトランジションを見据えた中長期ファイナンス提供、アカデミアには技術実証・イノベーション創出への貢献が求められる。今後は各主体間の連携により地域協議会等を通じた具体的な行動計画策定と実現方策の継続的検討が期待される。
