令和3年度「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業(オーガナイザー組織の持続可能な事業計画策定)」実施報告書
報告書概要
この報告は、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンによる石巻圏における水産業のイノベーション創出と持続可能な地域づくりについて書かれた報告書である。
震災後の石巻市は水産業を基幹産業としていたが、東日本大震災により壊滅的な打撃を受けた。現在は漁獲量の減少、魚食離れ、販路回復の遅れ、人材不足といった課題に直面している。一方で、復興過程において関係人口の流入や企業のCSR活動を通じて地域内外の交流が活発化し、これらの「つながり」を活かした価値共創の経験が蓄積された。
本事業では、石巻圏を「日本一、水産イノベーションが生まれる町」とするため、五つの主要な検討項目を実施した。まず石巻ワンファクトリー構想では、水産加工業者間の連携促進と共同受注システムの構築を図った。水産オープンイノベーションプラットフォームでは、地域の若手経営者と外部企業、大学、副業人材等をつなぐネットワークの構築を検討した。水産イノベーションファンドでは、水産業特化型投資ファンド「フィッシャーマン・ブルーファンド」の設立を計画し、水産イノベーションラボでは石巻圏での共同採用・研修システムの導入を検討した。地域商社機能強化では、三陸水産物の国内販路開拓とアメリカ向け輸出体制の整備を進めた。
これらの取り組みにより、外部から水産業に関わる人材や企業が自発的に訪れ、事業が事業を生み、人が人を呼ぶエコシステムの構築を目指している。同時に地域住民のシビックプライドを醸成し、地域内からも水産業に多様に関わる人材が輩出される持続可能な地域づくりへの寄与を図っている。オーガナイザー組織としての持続可能性を確立し、行政資金のみに依存しない多角的な事業展開の基盤を構築した。
