令和3年度産業経済研究委託事業(「イノベーション創出」のためのリカレント教育に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、イノベーション創出のためのリカレント教育に関する実態調査について書かれた報告書である。人生100年時代やSociety 5.0の到来、DXやカーボンニュートラルへの対応など、急激な社会変化に対応するため、企業と個人双方にとってリカレント教育の重要性が高まっている状況を受けて実施された調査である。
調査は主に二つの側面から行われており、第一にイノベーション創出を目指す企業のリカレント教育に関する実態調査として、大企業を中心としたアンケート調査とインタビュー調査が実施された。この調査では、企業における従業員のリカレント教育の実施状況、社内支援制度の整備状況、デジタル分野や量子技術分野、カーボンニュートラル分野などの先端分野における教育ニーズが詳細に分析されている。従業員規模別、業種別、設立年別などの属性による違いも明らかにされており、企業規模が大きいほどリカレント教育の実施率が高い傾向や、新しい企業ほど積極的である傾向が示されている。
第二に、リカレント教育を提供する場としての大学等の実態調査が行われ、産業界のニーズに対応した教育プログラムを提供している大学の事例が収集された。大学側の課題として、社会人向けプログラムの体系的な公表不足、受講しやすい時間設定の問題、産業界ニーズとのミスマッチなどが指摘されている。
調査結果からは、リカレント教育の必要性を認識しながらも実施に至らない企業が多数存在することが明らかになっており、その理由として時間確保の困難さや適切なプログラムの不足が挙げられている。一方で、積極的に取り組む企業では、明確なインセンティブ設計や経営戦略との連携が効果的であることが示されている。最終的に、企業に対する支援方策として情報発信の充実やインセンティブ設計の改善、大学に対しては産業界ニーズの取り込みや情報発信の工夫、実施体制の改善などが提言されている。
