令和3年度コロナ禍における地方移転動向を踏まえた地方イノベーション拠点の活性化に関する調査事業調査報告書(概要版)
報告書概要
この報告は、コロナ禍における地方移転動向を踏まえた地方イノベーション拠点の活性化について書かれた報告書である。新型コロナによる東京一極集中リスクの顕在化やリモートワークの普及を背景として、首都圏人材の地方移住や企業の地方移転が注目される中、関東経済産業局は地方イノベーション拠点を核とした首都圏と地方の連携モデル構築を目指した調査を実施した。調査対象は新潟県長岡市のNaDeC BASEと長野県松本市の33GAKUであり、それぞれの拠点のリソース・アセットと課題を詳細に分析している。長岡市では市内4大学1高専の学生起業家を核とした産業創出を目指しているが、スタートアップのビジネススケールアップ支援が課題となっている。技術力に強みを持つ一方で、経営・事業戦略・マーケティング・営業などの経営面の支援が不足している状況が明らかになった。松本市では14社が入居する33GAKUにおいて新規事業・イノベーション創出を目指す企業間のコラボレーションによる価値創出を目標としているが、目的の整理やターゲット絞り込みの必要性が指摘されている。調査結果を基に両都市向けの支援プログラムを設計し、長岡市にはものづくりスタートアップのスケールアップを目的としたレクチャーとメンタリング、松本市にはイノベーション創出のためのコンセプトメイク講座を実施した。プログラム実施により、支援者側では首都圏メンターとのネットワーク構築や企業支援ノウハウの習得、参加企業では具体的な課題明確化や新たな事業アイディアの具体化といった成果が得られた。しかし課題として、長岡市では企業ビジョンの明確化と外部志向の不足、松本市では外部連携への消極性が挙げられている。本事業を通じて地域企業は新事業創出において自社の強みや課題把握、外部パートナーとの連携における目的・領域・ターゲットの明確化に苦労していることが判明した。また地域における相談相手の不足により、自力でのイノベーション創出が困難な状況も明らかになっている。
