令和3年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業 インド国・ムンバイ沿岸(バーソバ~ビラール間)海上道路建設計画調査最終報告書
報告書概要
この報告は、インド・ムンバイ沿岸におけるバーソバ~ビラール間海上道路建設計画について書かれた報告書である。本事業は、ムンバイ沿岸沖合約1kmに計画された海上道路43kmの建設を中心とし、コネクタ道路やジャンクションを含めた総延長101kmに及ぶ大規模な都市郊外道路建設プロジェクトである。マハラシュトラ州道路セクターの優先事業として位置づけられ、円借款による支援案件として日本の技術導入を検討している。
報告書では、インド側が作成したPre-F/Sをレビューし、日本企業が持つ大規模海上橋梁建設技術や先進的な橋梁・維持管理技術等の導入可能性を検討した。ムンバイ都市圏における道路網計画や都市開発計画を分析し、2008年策定の総合都市交通計画に基づく沿岸道路計画として提案された経緯を示している。沿線地域では900~1000万人規模の人口が想定され、南部では人口密度が25,000人/km²を超え、北部では年率5~9%の人口増が見られることから、旺盛な都市開発需要があることが確認された。
現在、ムンバイ北部方面の道路交通は日24万~31万PCUの交通量が一本のウェスタン高速道路に依存している状況であり、VVSL整備による道路網の冗長性確保の重要性が示されている。事業費については、全線整備で5,528億円と推計され、海上道路区間では日本の鋼橋技術を適用してもムンバイ湾横断道路より低価格な事業費を実現できると分析している。これは仮設道路としてジオチューブを全面採用するためである。
経済財務分析では、交通コスト節減と時間短縮による便益を基に経済的内部収益率13.1%を得て、途上国の経済インフラとして十分な効果があると評価している。環境面では、CO2排出削減効果として年間12万トンの削減が期待でき、一方でマングローブ保護や野生動物への配慮が必要とされている。事業実施体制については、PPP適用は困難と判断し、EPC方式による公共事業として調達することを提案し、2027年施工開始、2032年供用開始のスケジュールを示している。