令和3年度中小企業実態調査事業 (地域におけるイベント・エンターテイメント産業の新たな在り方検討事業)我が国の新・デザイン政策研究~海外のデザイン政策動向・教育事例調査、デザインが企業経営に与える効果の先行研究レビュー~詳細版報告書
報告書概要
この報告は、海外のデザイン政策動向、デザイン教育事例、及びデザインが企業経営に与える効果について調査・分析を行い、我が国の新しいデザイン政策の在り方を検討するために実施された研究報告書である。
我が国のデザイン政策は1958年の通商産業省デザイン課設置以降、意匠盗用防止やグッドデザイン啓蒙を中心として展開され、2000年代には感性価値やブランディング、2010年代後半にはデザイン経営を提言してきた。しかし近年のデザイン領域拡大、創作主体の拡大による民主化、産業界の関心高まり、高度デザイン人材育成などの環境変化により、新しいデザイン政策の検討が求められている。本研究では各国・地域のデザイン政策、デザインの企業経営への意義・効果、デザイン教育について調査・分析を実施した。
14の国・地域のデザイン政策調査から、我が国の特徴・課題として五つの点が明らかとなった。第一に政策ビジョンとして、国策としてのデザインの目的や位置づけが不明瞭である。第二に政府体制として、政策検討の場が一部省庁に限定されている。第三に中間組織として、デザインに関するシンクタンク機能が脆弱である。第四に施策内容として、事業者・地域・市民を巻き込む総合的な政策が不充分である。第五に政策形成として、エビデンスに基づく政策立案・評価が不足している。
デザイン教育については、海外では幼少期から義務教育課程への教育プログラム取込や、非デザイナー層に対する基礎教育やビジネス・デザイン教育が積極的に実施されている。我が国では海外のような体系的教育は不充分であるものの、ソフト・コンテンツによるデザイン教育は比較的充実している。今後の取組として、ソフト・コンテンツによるデザイン教育の拡充・連携・評価、就業前の子どもに対する教員養成とデザイン教育研究、非デザイナー向けリカレント教育の位置づけ・能力要件検討・質保証枠組み、デザイナー向け高度専門教育の成果把握・アップデート・専門領域プログラム拡充が必要である。
