令和3年度展示会等のイベント産業高度化推進事業(ファッションビジネスの新市場獲得時の留意事項に関する調査)(詳細版)
報告書概要
この報告は、ファッションビジネスの新市場獲得における法的留意事項について書かれた報告書である。人口減少とデジタル化が進む経済環境において、ファッション分野は海外需要獲得戦略上の最重要テーマの一つとなっており、ファッションブランドの新市場領域への継続的な事業展開には多くの課題が存在する。海外の法制度・商慣行を踏まえた対策を基本とし、さらにサステナビリティへの適応や人権への配慮といった要請も年々高まりつつある状況となっている。また、昨今のNFTやメタバースの急激な拡大に伴い、デジタルファッション市場における模倣等のトラブルにも直面している。
日本のフィジカルファッション及びデジタルファッション市場において、ファッション商品に使用されるブランド及びデザインを保護する主な知的財産権としては、意匠権、著作権及び商標権が存在する。不正競争防止法は、周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為及び商品形態模倣行為を不正競争とし、差止め及び損害賠償請求等の対象としている。これらの知的財産権ごとの保護対象その他の主な特徴を理解し、保護しようとするものに応じて適切な知的財産権を見極め、場合によっては複数の知的財産権を組み合わせて保護を図ることが重要である。
各国におけるデジタルファッション市場の動向では、アメリカ、フランス、中国、タイの状況が詳細に分析されている。フィジカルファッションをめぐる各国の知的財産権法制の概要についても、各国の特徴的な制度や運用が整理されている。文化の盗用に関する事例では、近年問題となっている文化的要素の無断使用に関する具体的な事例が紹介されており、人種・ジェンダーに関する事例では、ファッション業界における差別的な表現や待遇の問題が取り上げられている。サステナビリティの取組と事例では、地球環境・人権・ジェンダー等の観点から、主要ファッションブランドの具体的な取組が分析されている。
