令和3年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業に関する報告書(ヴィジュアルアートによる組織活性化調査実証事業)
報告書概要
この報告は、オフィスにおけるヴィジュアルアートによる組織活性化調査実証事業について書かれた報告書である。経済産業省では令和3年度に、組織の競争力向上と差別化による付加価値向上を目的として、オフィスへのアート導入効果を検証する調査が実施された。海外では企業のアート投資と生産性向上の相関性が注目されており、国内でもこうした取組が始まっているものの、効果データは十分ではない状況であった。
調査では、経済産業省別館3階の廊下2面にウォールアートを制作し、アーティストユニットWHOLE9がトウキョウ・デックス合同会社の監修のもとで壁画を担当した。プロジェクトは6つのステップで進められ、まず経済産業省からのヒアリングを実施し、「METIらしさ」をテーマに設定した。続いてアーティスト選定を行い、職員17名が参加するVision Artワークショップを2022年2月17日にオンラインで開催した。ワークショップでは「あなたが思うMETIらしさとは」をテーマにディスカッションが行われ、その内容をもとにアーティストがドラフト案を制作し、最終的に壁画アートが完成した。
アート導入後の効果測定として職員へのアンケート調査を実施した結果、5つの項目で顕著な改善が見られた。モチベーション上昇が64%、ストレス減少が84%、コミュニケーション増加が82%、組織ブランディング力向上が79%、組織エンゲージメント力増加が65%となった。特に注目すべきは、ワークショップに参加してアートに自らの意見を反映できた職員の方が、参加しなかった職員よりも全ての項目でより高い効果を示したことである。「アートが経済産業省らしさを表している」と回答した率は、ワークショップ不参加者が50%であったのに対し、参加者は93%と大きな差が生じた。この結果は、組織メンバーがスペース変革プロセスに関与することの重要性を実証している。