令和3年度産業経済研究委託事業(諸外国における支配的事業者に対する規制の在り方に関する調査事業)報告書

掲載日: 2023年2月3日
委託元: 経済産業省
担当課室: 電力・ガス取引監視等委員会取引制度企画室
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報告書概要

この報告は、諸外国における支配的事業者に対する規制の在り方について書かれた報告書である。

欧州では1996年以降の電気事業制度改革により、送配電部門の中立化確保策として段階的な分離措置が進められてきたが、発電部門と小売部門の分離措置については特に規定されていない。欧州委員会による複数の調査分析では、垂直統合事業者の競争への影響について詳細な検討が行われており、垂直統合が卸電力市場の流動性を低下させ、独立系事業者の市場参入を阻害する可能性が指摘されている一方で、価格安定化や効率化に寄与する側面も認識されている。また、長期供給契約による発電・小売間の統合は囲い込みリスクを生み出す可能性があるとされている。

卸電力市場における相場操縦の監視については、欧州ではREMIT規則に基づいてACERが監視を実施し、米国ではFERCとRTO/ISOが連携した監視体制が構築されている。市場支配力のある事業者による入札規制では、限界費用や機会費用の考え方に基づく規制が実施されているが、各国で具体的なアプローチに違いが見られる。

情報公開については、米国PJMでは個別発電設備の出力実績は機密情報として非公開とされ、発電オファーについても約4カ月のラグを経て匿名化した形で公開されている。データの透明性向上は市場の効率性に資する一方で、共謀の助長やイノベーションインセンティブの低下などの競争阻害リスクも存在することが指摘されており、適切なバランスが求められている。