令和3年度産業経済研究委託事業(トークンのクレジット取引への活用可能性調査)報告書
報告書概要
この報告は、カーボンニュートラル実現に向けてカーボン・クレジット取引にトークン技術を活用する可能性について書かれた報告書である。経済産業省が株式会社野村総合研究所に委託して実施した令和3年度産業経済研究委託事業の成果として、2022年3月に公表されたものである。
報告書は、国内のクレジット取引が取引の煩雑さや価格の不透明さ、付加価値の多様性欠如、互換性のない制度の併存、金融商品の不足などの課題を抱えていることを背景として、トークンを活用してクレジットの利便性を向上させ、取引の活性化を図る方策を検討している。調査では、トークン活用の海外動向調査、クレジット創出や取引におけるトークン導入の実現可能性に係る調査・分析を実施した。
具体的には、トークン活用事例調査、非トークン活用事例調査、トークン導入オプション・論点の設定、ステークホルダ意向調査、オプション検討・取りまとめ、次年度以降の計画策定の6つのタスクを実行した。海外事例として、NORI、Air Carbon、Climate Futuresなどのトークン化プラットフォームを調査し、成果モニタリングから取引、トラッキングまでの一気通貫でのトークン化の意義を分析している。
トークン導入により実現される効果として、価格の透明性確保、取引の小口化、リアルタイム性・グローバル化、不正取引の防止、二重計上防止、クレジット消費の透明性向上、環境価値の所有や利用の管理などが挙げられている。今後の課題として、Lクレジットの対象となる活用の定義づけ、各事業者のコスト抑制につながる共通基盤の整備、価格の透明性・予見性を高める取引制度の設計、地域別・業界別のアプリケーションに対応可能なシステム設計などの政策的課題への対応が必要であるとしている。