令和3年度クライメート・イノベーション・ファイナンス推進事業委託費(イノベーション・ファイナンスのあり方に関する調査)報告書

掲載日: 2023年2月10日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業技術環境局環境政策課環境経済室
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令和3年度クライメート・イノベーション・ファイナンス推進事業委託費(イノベーション・ファイナンスのあり方に関する調査)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、日本の脱炭素社会実現に向けたイノベーション・ファイナンスのあり方について書かれた報告書である。世界的に気候変動問題への関心が高まる中、2050年カーボンニュートラル実現には革新的技術の開発と実用化が不可欠であり、そのための資金供給体制の整備が急務となっている。サステナブルファイナンスは世界的に拡大しているものの、再生可能エネルギーやグリーンビルディングなど特定領域に偏りが生じており、多排出産業を含む産業分野への資金供給は限定的である。気候関連の革新的技術は資本集約型で開発期間が長く、流動性が限定的という特徴があり、研究開発から社会実装まで10年以上を要する技術が多い。これらの技術への資金供給において、従来のリスク要因に加えて、長期プロジェクト期間に伴う技術リスクと政策リスクの増加、ビジネス・市場創出における収入リスクの増加、情報の非対称性と先進的技術評価の困難さ、投融資期間のミスマッチと資金供給者同士の連携不足という課題が顕在化している。日本政府は革新的環境イノベーション戦略を策定し、クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020において、トランジション、グリーン、イノベーションを同時推進する方針を示した。ゼロエミ・チャレンジによる企業の見える化やクライメート・イノベーション・ダイアログによる官民対話の場設置など具体的施策を実施している。水素関連技術を事例として分析した結果、水素発電、大規模水素輸送、水素電解装置それぞれに固有の技術的・経済的課題が存在することが明らかになった。これらの課題克服には、安定した需要創出、安定した操業確保、資金供給におけるリスクシェアリングという3つの官民連携オプションが有効である。海外では官民ファンドや国際的な技術協力による資金供給促進の取組が進んでおり、日本も同様の仕組み構築が求められる。今後は、クライメート・イノベーション・ダイアログの継続的実施により民間主導の資金供給体制を構築し、ゼロエミ・チャレンジの改善とベンチャー企業向け施策の充実を図ることで、革新的技術の早期社会実装を促進する必要がある。