令和3年度クライメート・イノベーション・ファイナンス推進事業委託費(トランジション・ファイナンスのあり方に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、パリ協定の目標達成に向けたトランジション・ファイナンスのあり方について書かれた報告書である。
令和3年度において、多排出産業における脱炭素化への移行を支援する金融手法として、トランジション・ファイナンスの重要性が世界的に高まっている状況を受け、経済産業省の委託により野村総合研究所が実施した調査結果をまとめている。報告書では、国内外のサステナブルファイナンスの動向調査として、EUタクソノミーの拡張案やICMAによるClimate Transition Finance Handbookの活用状況、TCFDによるTransition Plan開示要求などの最新動向を分析している。
業種別ロードマップの策定においては、鉄鋼、化学、電力、ガス、石油、セメント、紙・パルプの7分野について、脱炭素化に向けた技術経路と必要な投資額を詳細に検討している。各分野では、IEAやSBTiなどの国際的に認知されたシナリオとの整合性を確保しつつ、日本固有の事情を考慮した現実的な移行経路を提示している。さらに、アジア地域への展開を見据えた調査として、Asia Transition Finance Study Groupの活動やマレーシア、シンガポール、中国などのタクソノミー動向を分析し、地域特性を踏まえたアプローチの必要性を明らかにしている。
トランジション・ファイナンスモデル事業では、日本郵船、商船三井、川崎汽船、JFEホールディングス、日本航空、住友化学、東京ガス、JERA、IHI、大阪ガス、三菱重工、出光興産の計12社による実証事業を実施し、各案件について第三者評価機関による適合性評価と事例集の作成を行っている。これらの事例は、船舶、鉄鋼、航空、化学、ガス、電力、機械、石油など多様な業種にわたり、実際のトランジション・ファイナンス活用における課題と解決策を具体的に示している。
