令和3年度産業経済研究委託事業(日本企業の税務対応状況等に係る調査研究及び第四次産業革命の進展等の経済社会構造の変化と税制に関する調査事業)報告書
報告書概要
この報告書は、日本企業の税務対応状況および第四次産業革命進展に伴う経済社会構造変化と税制に関する調査研究について書かれた報告書である。主要な内容は、資本金1億円超の企業17,753社を対象としたアンケート調査の実施と分析、さらに外部有識者による意見交換会の開催である。調査では回収率18.8%で3,342社から回答を得て、平成26年度法人税改革の影響を中心に企業の税負担実態を分析した。法人税改革により実効税率は34.62%から29.74%に低下したものの、企業の実感としては外形標準課税の拡大により負担増を感じる企業が負担減を感じる企業を上回った。特に課税所得金額1億円未満および損失計上企業で負担増の回答が多く、課税所得金額が大きい企業ほど負担減を実感する傾向が見られた。意見交換会では労働市場の流動性向上、スタートアップ活性化、個人に着目した税制について議論された。労働流動性については解雇規制緩和と職業訓練制度拡充をセットで実施する北欧モデルが参考とされ、スタートアップ支援ではエンジェル税制の改善や小口投資制度の導入、外国人起業家・投資家の呼び込みが提案された。税制全般については年末調整廃止とフラット税制導入、源泉徴収制度見直し、副業普遍化に対応した社会保険一元化、人的投資促進のための減価償却的措置などが検討課題として挙げられた。本調査は経済のデジタル化とコロナ禍による構造変化を背景に、成長志向の税制改正と企業負担軽減を目的として実施されたものである。
