令和3年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査)ロシア連邦・北極海航路沿岸におけるLNG・風力活用計画等策定及び事業実施可能性調査事業報告書
報告書概要
この報告は、ロシア連邦の北極海航路沿岸における LNG・風力活用計画等策定及び事業実施可能性調査について書かれた報告書である。本調査は、令和3年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業の一環として、株式会社駒井ハルテック、三井物産株式会社、株式会社野村総合研究所により実施された。調査の目的は、ロシア政府の北極圏開発戦略を背景として、北極海沿岸地域におけるディーゼル発電のクリーンエネルギーへの転換と温室栽培事業の実施可能性を検討することである。具体的には、北極圏におけるLNG・風力活用計画のロードマップ策定、LNG・風力発電事業の事業実施可能性調査、排熱等活用型農業用温室の事業実施可能性調査、余剰電力活用型グリーン水素・温水製造の事業実施可能性調査、経済性検討・CO2排出量調査の検討を実施している。調査対象地域はロシア連邦の北極圏であり、その面積は本土490万㎢、島嶼20万㎢、内海等400万㎢となっている。北極圏地域は極めて厳しい自然・気候条件、極めて低い人口密度、インフラ整備レベルの低さ、環境破壊の進みやすい生態系といった特色を有している。また、人口減少、QOL指数の低さ、社会サービスへのアクセスの低さ、物資供給の困難さ、輸送インフラの未整備、高いサービス・物資価格、企業の低い競争力、ディーゼル発電の高いシェアなどの社会課題に直面している。事業モデルとしては、プロヴィデニヤを対象都市とした風力発電事業、天然ガス火力発電事業、排熱等活用型農業用温室事業、グリーン水素・温水事業を検討している。経済性分析の結果、ベースケースにおいてIRRは-3.79%と算出され、収益性が低いことが判明した。CO2排出削減量については、既存のディーゼル発電から風力+LNGガス火力発電方式への転換により、年間約935tのCO2削減が見込まれる結果となった。しかし、LNG価格水準の見通し、設備コストの低減、風況条件の確保、スケールメリットの実現、適切なファイナンス組成などの課題が明らかとなり、ウクライナ情勢を鑑み当面の事業検討見合わせが示されている。
