令和3年度「ドイツにおける中小企業の研究開発投資が当該企業の海外展開に及ぼす影響とドイツにおける海外展開支援施策の現状に関する調査」事業報告書
報告書概要
この報告は、ドイツにおける中小企業の研究開発投資が海外展開に与える影響とドイツの海外展開支援施策について調査した報告書である。令和3年度に中小企業庁の委託により実施された調査では、フラウンホーファー研究機構(FhG)の在外拠点による営業支援活動、中小企業の研究開発投資と海外販路開拓の関係、政府・州政府の支援策体系、EU域外展開事例の収集という4つの観点から分析が行われた。
調査の結果、FhGの在外拠点による海外展開支援は限定的であり、実際には在日ドイツ商工会議所、州経済振興公社、メッセ会社、ドイツ貿易・投資振興機関など多様な機関が重層的にドイツ中小企業の海外展開を支援していることが明らかとなった。研究開発投資については、FhGが中小企業の技術開発において重要な役割を果たしており、企業は連邦政府のZIMプログラムや州政府の支援施策を活用して研究開発を推進し、その成果を海外展開につなげている実態が確認された。
ドイツの中小企業支援策は、EU、連邦政府、州政府による多重構造となっており、研究開発支援から海外展開支援まで幅広い分野で包括的な支援体系が構築されている。特に注目されるのは、研究機関と企業の連携を促進する仕組みや、技術開発から実用化、市場展開まで一貫して支援する政策設計である。実際の企業事例では、水処理技術、エレベーター部品、精密加工技術などの分野において、FhGや大学との共同研究を通じて独自技術を確立し、それを基盤として世界市場への展開を実現している企業が多数確認された。
日本への示唆として、国内外の公的研究機関との共同研究開発の推進と、海外ニーズ探索を促進する支援の必要性が提言されている。