令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業地域におけるガス事業者の経営基盤等に関する委託調査報告書
報告書概要
この報告は、2017年のガス小売全面自由化後における地域ガス事業者の経営基盤等について分析した報告書である。
ガス業界は2017年の小売全面自由化により、電気事業者やLPガス事業者等の異業種からの新規参入が相次ぎ、都市ガス市場における競争が着実に進展している。新規小売の都市ガス販売量に占める割合は2017年4月の8%から2020年12月には18%まで拡大し、契約のスイッチング申込件数も400万件を超える規模に達した。しかし、地区別にみると関東や近畿等の都市部では堅調にスイッチングが進む一方、東北や中国・四国では発生しておらず、地域格差が顕著である。
大手4事業者を除くガス事業者は、新規参入の有無に関わらず従来からの他エネルギーとの競合を踏まえ、新たな料金・サービスメニューの提供や既存料金の引下げ等により対応している。また、LPガス事業や電力事業、リフォーム事業等への多角化を進める事業者も少なくない。
一方、人口減少と少子高齢化の進行により、地域社会の担い手減少や地域経済の縮小、地域の魅力・活力の喪失等、地域において様々な問題が生じるおそれがある。このため地域に根ざしたガス事業者には、自治体や地域企業と一体となって地方創生やSDGs、脱炭素化に資する取組みへの貢献が期待されている。
本調査では、ガス事業者の財務分析により生産性、収益性、効率性、成長性、安全性等の観点から分析を実施し、供給区域の人口動向や需要家密度等の経営環境を整理した。さらに、クラスター分析により類似企業群を整理し、12社のヒアリング調査を通じて特徴的な取組事例を把握した。調査結果から、バイオマス発電事業支援、修理技能コンテストの実施、デジタル技術の活用、脱炭素関連活動、複数社からの原料調達によるレジリエンス強化、燃料転換への積極的取組み等、多様な経営基盤強化策が確認された。