令和3年度重要技術管理体制強化事業(クラウドを活用した重要情報管理体制強化に向けた調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、日本政府の重要技術管理体制強化事業におけるクラウドサービス活用に関する調査について書かれた報告書である。令和3年度にガートナージャパン株式会社が実施した本調査は、政府・産業・インフラ領域におけるクラウドサービスの利用実態と、重要情報を扱う企業の懸念点を明らかにすることを目的としている。近年、民生技術と防衛技術の境界が曖昧となる中で、懸念組織等への情報流出を防ぐ観点から情報管理の徹底が急務となっており、高い安全性と信頼性を持つクラウドサービスの充実が求められている状況にある。調査では、クラウドサービスの技術動向調査、他国政府の利用状況調査、企業へのアンケート調査とヒアリング調査を実施し、2021年度以降の施策展望と課題対策を検討している。技術動向調査では、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドの比較分析を行い、それぞれの特徴と課題を整理している。オンプレミスとプライベートクラウドは利用者の業務要件に合わせたシステム構築が可能である一方、拡張性が低く初期コストと運用コストが高価となる。パブリッククラウドは拡張性が高く初期コストと運用コストが安価であるが、サービス事業者への依存度が高く、カスタマイズ性が低く、障害発生時の即時対応や個別対応が困難となる課題がある。企業のクラウド利用拡大における主要な課題として、セキュリティ、可用性、性能、ベンダーロックインの4つの観点が特定されている。セキュリティ面では、利用者のクラウド設定ミスに起因するリスクへの対策が重要であり、可用性面では無停止が要求される重要システムにおいてオンプレミスと同レベルの可用性確保が要件となっている。性能面では医療や工場現場において安定的な低遅延環境が求められ、ベンダーロックイン対策としてクラウド事業者の特徴に合わせた適材適所での活用が必要とされている。
