令和3年度学びと社会の連携促進事業(「未来の教室」(学びの場)創出事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省による教育のデジタル化と新しい学習方法に関する実証事業について書かれた報告書である。2022年に実施された「未来の教室」実証事業では、EdTechの活用やSTEAM教育の推進、特にミネルバ大学の教授法を用いた教員研修が中心的なテーマとなっている。
実証事業の主要な取り組みは以下の通りである。まず、EdTechサービスの実証として、15-20社程度の企業が参加し、学習管理システムやAI活用による個別最適化学習の検証を行った。また、GIGA スクール構想と連携したデジタル教材の活用促進や、教育現場でのICT環境整備の効果測定も実施された。さらに、STEAM教育の実証では全国の約20-30校において、プログラミング教育や探究学習の新しいカリキュラムが試行され、約700名から1,000名の生徒が参加した。
特に注目すべきは、ミネルバ大学の教授法を活用した教員向けトレーニングプログラムである。このトレーニングは約90分×10回のオンライン双方向型で実施され、授業の計画・進行・フィードバックと評価の3つの要素から構成されている。参加した教員の94%が指導法や教育に対する考え方に変化があったと回答し、88%が実践に役立ったと評価している。
実際の教育現場では、高知県立清水高等学校の小島教諭がミネルバ教授法を活用した完全アクティブラーニング型授業を開発し、GoogleWorkspace for Educationを用いて汎用性の高い授業形式を構築した。佐川高等学校の福島教諭は「学習の転移」に着目し、火山のある島での街づくりという実社会に関連した課題を通じて、知識の実用性を重視した探究型授業を実践した。山田高等学校では、生徒向けの「脳科学をベースに、学び方を学ぶ」授業を5回にわたって実施し、生徒の創造性や問題解決能力の向上が確認された。
これらの取り組みにより、従来の知識伝達型授業から生徒主体の対話的学習への転換が進み、教員の役割も「教える」から「聞く」「対話する」「見守る」へとパラダイムシフトが生じている。実証結果では、生徒の学習意欲向上、主体的学習態度の育成、そして実社会への知識応用能力の発達が示されており、これからの教育における新たな可能性を提示している。
